今回は、ダブルバインド(2重拘束)についてお話したいと思います。
ダブルバインドとはグレゴリー・ベイトソンが作った用語で、複数の矛盾したメッセージを発信することによって相手を混乱させてしまうコミュニケーションです。ここで言うコミュニケーションとは言語だけではなく、表情や行動も含まれます。
例えば、こんな例があります。
・「このケーキ美味しいよ」と友達が買ってきたケーキを食べたら「太っちゃうよ」と言われた。
・上司に「何でもいいからコーヒー買ってきて」と言われたので「ブラックコーヒー」を買ってきたら「砂糖が入っていないので飲めない」と言われた。
・お父さんからは「宿題をやりなさい」、お母さんからは「お手伝いをしなさい」と同時に言われた。
・「体調不良の時は先生に言ってね」と言われたので、「お腹が痛い」と伝えたら「もう少し頑張れ」と言われた。
ダブルバインドは、友達関係、会社、学校や家庭など日常的にみられます。
伝えた側に悪意がなく小さな事であれば軽く受け流せますが、上司と部下、親と子どもなど簡単に離れられない関係性で頻回に繰り返されるとダブルバインドを受ける側は強いストレスを抱えて心身のバランスを保てなくなってしまいます。
①上司が「分からないことはすぐ聞いて」と部下に言った。
②部下が「わからないので教えてください」と上司に言った。
③上司が「それくらいは聞かずに自分で考えて」と部下に言った。
このようなコミュニケーションはよくありますが、この場合部下は「わからないことを聞いても、聞かなくでも叱られる」という混乱を感じます。
部下は上司の指示に従おうと一生懸命行動しますが、どの選択肢を選んでも叱られる、評価が得られない日常が繰り返されると心理的なストレスから心のバランスを崩し、不眠、過呼吸、動悸など身体の不調にも繋がってしまいます。
「自分がダブルバインドを受けているかも?」そう感じた時は下記のような対応がおすすめです。
・復唱と確認をする。
「コーヒーは何でもいいんですね?」
「宿題とお手伝いどっちを先にしたらいい?」
「わからないことがあったら、すぐに〇〇課長に質問させて頂きます。」
「自分で考えてみます。また〇〇課長にも相談させて頂きます。」
など相手の言葉を復唱しながらしっかりと確認をすることで、メッセージを発信した相手が自分自身の指示を客観視できます。
・自分を否定しない
自分自身を否定しないことがとても大切です。
ダブルバインドを受けると「自分が出来ないから叱られた」「自分のせいで相手を怒らせた」など、自分の行動が悪かったからだと責めてしまいがちです。
コミュニケーションは相手と自分の伝え合いなので、どちらが悪くてどちらが正しいという訳ではありません。「伝える方」にも「受け取る方」にも個性と偏りがあって当たり前です。自分にも反省する所があるのなら「じゃあ次はどうしようか?」と試行錯誤をしていければ良いと思います。
ダブルバインドには否定的な面だけでなく肯定的な使い方もあります。
・「運動会のお弁当はサンドイッチとオムライスどっちがいい?」と子どもに聞けば、子どもがワクワクしながら「サンドイッチ」などと選択し、お母さんは「〇〇のキャラクターお弁当がいい」という手間のかかるメニューを回避できます。
・「わからないことがあったらすぐに聞いて」「午前中は忙しくて時間はとれないけど」と上司が部下に伝えれば、部下は「わからないことは午後に聞く」という選択ができます。
複数の選択肢を提示すれば、受ける側がストレスや負担を感じずに、ある程度行動を制限できます。ダブルバインドをプラスに働かせる為にはお互いの信頼関係がベースにあることがとても重要です。相手にとっても自分にとって̟もプラスになることを大前提としダブルバインドを活用してして頂きたいと思います。
最後に、ダブルバインドにより心身の不調(不眠、思考がまとまらない、過呼吸、動悸、無気力など)が出た場合、一人で解決するのは難しいです。勇気を出して、信頼できる人に相談してくださいね。
また、ダブルバインドを受けている人から相談を受けた場合は、受容と共感を大切に。うなづきながら話を最後まで聴いてください。